よだかの星 - 平野綾.mp3
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[00:08.75]よだかの星[00:10.59]宮沢賢治[00:14.98]「東の白いお星さま、[00:17.63]どうか私をあなたの所へ連れてって下さい。[00:22.95]やけて死んでもかまいません。」[00:27.07]鷲は大風に云いました。[00:32.10]「いいや、とてもとても、[00:34.63]話にも何にもならん。[00:37.66]星になるには、それ相応の身分でなくちゃいかん。[00:42.32]又よほど金もいるのだ。」[00:47.70]よだかはもうすっかり力を落してしまって、[00:52.69]はねを閉じて、地に落ちて行きました。[00:58.49]そしてもう一尺で地面にその弱い足がつくというとき、[01:05.27]よだかは俄かにのろしのようにそらへとびあがりました。[01:12.12]そらのなかほどへ来て、[01:14.43]よだかはまるで鷲が熊を襲うときするように、[01:19.64]ぶるっとからだをゆすって毛をさかだてました。[01:26.23]それからキシキシキシキシキシッと高く高く叫びました。[01:37.44]その声はまるで鷹でした。[01:42.37]野原や林にねむっていたほかのとりは、[01:45.91]みんな目をさまして、[01:47.92]ぶるぶるふるえながら、[01:50.82]いぶかしそうにほしぞらを見あげました。[01:56.76]夜だかは、どこまでも、どこまでも、[02:01.32]まっすぐに空へのぼって行きました。[02:07.26]もう山焼けの火はたばこの吸殻のくらいにしか見えません。[02:14.55]よだかはのぼってのぼって行きました。[02:20.60]寒さにいきはむねに白く凍りました。[02:26.82]空気がうすくなった為に、はねをそれは[02:30.29]それはせわしくうごかさなければなりませんでした。[02:35.98]それだのに、ほしの大きさは、[02:39.58]さっきと少しも変りません。[02:43.93]つくいきはふいごのようです。[02:48.22]寒さや霜がまるで剣のようによだかを刺しました。[02:55.41]よだかははねがすっかりしびれてしまいました。[03:00.03]そしてなみだぐんだ目をあげて[03:03.75]もう一ぺんそらを見ました。[03:07.50]そうです。[03:09.68]これがよだかの最後でした。[03:14.90]もうよだかは落ちているのか、[03:18.26]のぼっているのか、[03:20.57]さかさになっているのか、[03:22.74]上を向いているのかも、[03:24.44]わかりませんでした。[03:27.65]ただこころもちはやすらかに、[03:31.92]その血のついた大きなくちばしは、[03:35.09]横にまがっては居ましたが、[03:38.06]たしかに少しわらって居りました。[03:43.84]それからしばらくたって[03:46.49]よだかははっきりまなこをひらきました。[03:52.63]そして自分のからだが[03:56.07]いま燐の火のような青い美しい光になって、[04:01.38]しずかに燃えているのを見ました。[04:06.12]すぐとなりは、カシオピア座でした。[04:12.23]天の川の青じろいひかりが、[04:14.99]すぐうしろになっていました。[04:19.72]そしてよだかの星は燃えつづけました。[04:25.95]いつまでも いつまでも燃えつづけました。[04:33.05]今でもまだ燃えています。
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